認定日本語教育機関の申請とその課題

カリキュラムを制して認定を突破する

2026年06月05日 15:34

認定日本語教育機関の課程編成・面接審査対策


「カリキュラムは作った。書類も提出した。でも不認定だった——」

令和7年度2回目の認定率は32%。落ちた学校の多くに共通するのが、  学習目標・授業時間配分の根拠・評価設計の「整合性の欠如」です。現場で目にしてきたその実態をお伝えします。

なぜカリキュラムの不備で落ちるのか——審査官が見ているもの

審査官は書類の「体裁」ではなく、「論理的一貫性」を見ています。授業は行われている。教材もある。教員もいる——それでも不認定になる理由は、書類の中で「目標・内容・評価・修了」という4つの要素が噛み合っていないからです。

文部科学省が公表する不認定事例(根拠規定:法第2条第3項第2号、第22条、第28条)を整理すると、毎回繰り返し登場する指摘が3つあります。

指摘の種類根拠規定よくある問題CAN-DOの不備法22条・認定基準5-2(2)(5)市販教材のCAN-DOをそのまま転用している授業時間配分の根拠不備認定基準5-2(2)・指針(単位時間目安)指針の目安から大きく外れた時間設定に根拠説明がない評価設計の不備認定基準5-2(6)(8)形成的評価がなく学期末1回だけ・ルーブリック未整備

【想定①】Can doが「教科書のコピー」と指摘される?!

面接審査の場では、審査官からこんな言葉が出流かもしれません。

Can-doが市販教材の付属品と同じですが、学校の理念——どのような学生を育てたいか——に沿って作成すべきではないでしょうか。


市販教材に掲載されているCan doをそのまま使っていた機関への指摘を想定します。審査官は書類の記述パターンから、「これは自校で作ったものではない」と読み取っていました。

Can doは単なる「到達目標の一覧」ではありません。「この学校は、この学習者に、何を身につけさせるのか」という機関固有の宣言です。専門学校進学を目指す学習者を対象とするなら、プレゼンテーション技能・論証的な読解・口頭発表——こうした「進学後に必要な力」が反映されていなければなりません。

Can do自作の最低ラインチェック

以下が一つでも「×」なら、CAN-DOの再設計が必要です。

  • 対象学習者の特性(漢字圏・非漢字圏、進学・就労)が反映されているか

  • レベル間(初級→中級→上級)で到達目標が段階的に高度化しているか

  • 「聞く・読む・書く・話す(やりとり)・話す(発表)」の5活動をカバーしているか(認定基準5-2(5))

  • 対応する評価ルーブリックが存在するか

【想定②】「B1レベルに600時間は多すぎませんか」と聞かれる面接

認定日本語教育機関日本語教育課程編成のための指針には、各参照枠レベルの学習時間の目安が示されています。B1レベルの目安は200〜294単位時間。ところが、私が関わった申請機関ではB1に600単位時間を設定していました。

面接審査で、審査官がこう確認されたとします。

B1のレベルに600単位時間を設定されていますが、指針の目安は200〜294単位時間です。この差について、どのような根拠からでしょうか。

この質問自体は「NG」の指摘ではありません。指針の目安はあくまで「目安」であり、合理的な根拠があれば独自設定は認められます。問題は、その根拠が様式10-1に一切書かれていなかったことです。

この回答はどうでしょうか。「対象学習者が非漢字圏出身のため、B1段階で必要な漢字(700〜1,200字)の習得に相応の時間を要します。また、タスクの性質も少し変わり5つの言語活動を通じて確実にB1の運用力を育成するために600単位時間を設定しています」。

審査官は納得させることが重要です。指針と異なる設定をする場合、「なぜその時間数なのか」を様式10-1の特色欄に書くこと——これが教訓です。

授業時間配分の根拠を書くべき場面

以下のいずれかに当てはまる場合、様式10-1に根拠説明が必要です。

  • 特定のレベルの時間数が指針の目安から30%以上乖離している

  • コース間(1年コースと2年コース等)で同一レベルの時間数が異なる

評価設計の核心——「形成的評価+総括的評価」の両立

審査で頻繁に問われるのが「自律的な学習を促す評価になっているか」(認定基準5-2(8))という点です。年1回の期末試験だけで評価している機関は、この要件を満たしません。

実務上、最も説得力を持つ評価設計は次の組み合わせかもしれません。

【課別テスト(小テスト)(形成的評価)】学期中・随時学習の定着確認・学習の遅れを早期発見。成績には含めない

【振り返りテスト(総括的評価)】学期に2回、5技能をルーブリック表を用いて評価。

これ以外にも記載内容はありますが、詳細な記述が様式10-2にあると、面接で「評価の信頼性はどう担保するか」と問われたとき、資料と合わせて論理的に答えられます。評価設計は「書類の体裁」ではなく、面接での答弁能力の土台になります。

まとめ——カリキュラムは「一度決めれば変えない」設計が最強

  • Can doは市販教材からコピーせず、学校の理念と学習者像から自作する

  • 指針の時間目安から乖離した設定には「なぜその時間数か」の根拠を様式10-1に必ず書く

  • 評価は形成的(日常的)+総括的(学期末)の両輪。ルーブリックで客観性を担保する

  • 様式10-1(教育課程)・様式10-2(評価設計)・学則の3点が一致しているかを必ず確認

  • 厳格に設計した評価基準は、現場の「迷い」を消し、教員と学生双方に公平性をもたらす

認定申請の書類は、提出してしまえば変えられません。面接で「修正してください」と言われても、書類が残ります。最初の設計が全てを決めます。


参考資料・出典

「自校のCAN-DOや授業時間配分の設定を点検してほしい」
「様式10-1・10-2の書き方がわからない」
そのご相談、一度お話を聞かせてください。


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